東京地方裁判所 平成9年(行ウ)151号 判決 1999年3月30日
東京都世田谷区上北沢三丁目二二番一八号
原告
井上得三
東京都世田谷区松原六丁目一三番一〇号
被告
北沢税務署長 高橋政志
被告指定代理人
竹村彰
同
内田健文
同
佐藤大助
同
荒川政明
同
栗原牧彦
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
被告が、原告に対して、平成七年三月六日付けでした原告の平成元年分ないし平成五年分の所得税に係る各更正(平成二年分を除く各年分については、平成八年一二月六付け審査裁決により一部取り消された後のもの。)のうち別表一ないし五の各順号1確定申告の項記載の各総所得金額及び各納付すべき税額を超える部分並びに各過少申告加算税賦課決定(平成二年分を除く各年分については、平成八年一二月六日付け審査裁決により一部取り消された後のもの。)を取り消す。
第二事案の概要等
一 事案の概要
本件は、原告が所有する大阪府箕面市今宮二丁目八三二番二の土地(以下「本件土地」という。)上の建物(以下「本件建物」という。)、駐車場及び付帯設備(以下これらを併せて「本件物件」という。)に係る株式会社サントリーレストランシステム(昭和六三年九月七日株式会社ダイナックに商号変更。以下「サントリーレストラン」という。)の賃貸料を平成元年分ないし平成五年分(以下「本件各係争年分」という。)における原告の不動産所得と認定して、被告が平成七年三月六日付けでした各更正(平成二年分を除く各年分については、平成八年一二月六日付け審査裁決により一部取り消された後のもの。以下「本件各更正処分」という。)及びこれに基づく各過少申告加算税賦課決定(平成二年分を除く各年分については、平成八年一二月六日付け審査裁決により一部取り消された後のもの。以下「本件各賦課決定処分」という。)に対して、本件物件はそれを所有する有限会社井上企画(以下「井上企画」という。)から賃借し、サントリーレストランに転貸しているもので、井上企画への支払賃料等を支払うと収入となるべき金額はないとする原告が、本件各更正処分のうち確定申告書に記載された各総所得金額及び各納付すべき税額を超える部分並びに本件各賦課決定処分の取消しを求めるものである。
二 争いのない事実等(甲第一号証の一、二、乙第四号証の一、二、第五号証、第七号証の四)
1 本件各係争年分に係る原告の所得税につき、原告の行った各確定申告、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分並びにこれらに対する不服の経過は別表一ないし五のとおりであり、原告は、平成九年三月一二日、本件訴えを提起した。
なお、本件は、当初、国税不服審判所長を被告とする裁決の取消しを求める訴えとして提起されたが、平成九年六月一八日、被告に対する本件各訴えが追加され、その後、国税不服審判所長に対する訴えは取り下げられた。
2 井上企画は、本件建物の所在地を本店所在地として昭和六二年五月二日に設立登記を経た法人である。
3 本件土地は原告が所有しているが、本件建物は、昭和六一年一二月三日新築を原因として、昭和六二年八月一九日付けで、井上企画を所有者として表題部の登記がされている。
三 当事者の主張
(被告)
1 本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の根拠は、別紙のとおりである。
2 サントリーレストランと原告との間で昭和六〇年一二月一三日に締結された店舗賃貸借契約では、本件建物の所有者は原告であることが前提とされており、本件建物の建築請負契約及び代金の支払はいずれも原告が行い、建築確認通知書及び検査済証の名宛人も原告とされているから、本件建物の所有者は原告であり、井上企画には営業の実体はないから、本件各係争年分に係る期間中の本件建物の質料は原告の不動産所得に属する。
(原告)
1 井上企画は実体のある法人であり、原告と同一視することはできない。
サントリーレストランとの契約で原告が本件建物の所有者として扱われているのは、当時、井上企画が設立されていなかったからであり、その後、井上企画の設立により、井上企画から原告が本件建物を借りて、サントリーレストランに又貸しすることとなったものであり、井上企画の実体がないからではない。
原告のサントリーレストランからの収入は原告の東京、大阪間の旅費等の経費及び井上企画への支払金額より少なく、原告には収入が生じていない。
2 仮に、井上企画が実体のない法人であるとしても、本件建物及び本件土地の固定資産税相当額は必要経費として考慮されるべきである。また、原告がサントリーレストランとの賃貸借に関して東京、大阪間を往復するのに要した旅費、滞在費も費用として認められるべきである。
3 サントリーレストランの建物敷地を含む原告所有地の一部を国が国道一七一号線の一部として使用しているのに、これによる原告に対する損害の賠償はされていない。
被告は平成一〇年五月二九日付けで本件土地等を滞納処分として差し押さえたが、これは税額に比して著しく多額の不動産を差し押さえた違法なものであり、これにより原告は多額の損害を被った。
第三当裁判所の判断
一 以下の括弧内に示した証拠によれば、次の事実を認めることができる。
1 井上企画は、昭和六二年五月二日、資本の総額を一〇〇万円とし、原告を代表取締役、その同居の親族と推認される者を他の取締役として設立された有限会社であり、当初、本件土地の所在地を本店所在地としていたが、昭和六三年二月一〇日には、原告肩書地へ本店を移転している(乙第四号証の一、二)。
なお、箕面市内の不動産につき井上企画が固定資産税を負担しているものは、本件建物のみである(乙第八号証の一)。
また、井上企画は、平成五年及び平成六年には、原告及び井上敬三につき健康保険料及び厚生年金保険料を負担している(甲第二号証、乙第一二号証)。
2 原告は、井上企画が設立される前の昭和六〇年一二月一三日付けで、サントリーレストランとの間で店舗賃貸借契約を締結したが、この契約の趣旨は原告において本件建物を建築し、これをサントリーレストランに賃貸するというものであり、本件建物の建築主及び本件建物に課せられる公租公課及び火災保険料の負担者は原告とされており(乙第一号証の一)、現実に本件建物の建築工事は原告が請負契約を締結し、原告を施主として進められた(乙第三号証、第六号証)。
3 原告と井上企画代表者たる原告とは、井上企画の設立前の昭和六一年八月二五日付けで、質料を固定資産税相当額、契約終了時の地上建物は原告が適当な価格で買収することとして、一時使用の目的で、原告が所有する箕面市内のすべての土地を井上企画に賃貸する旨の土地賃貸借契約書を作成し、また、同年一二月一三日付けで、井上企画が所有する建物、駐車場、その他の付帯設備につき、賃料は右土地賃貸借契約書に記載された土地及び井上企画所有建物の各固定資産税額に相当する額並びに井上企画の必要経費とし、サントリーレストランへの転貸を承認する旨の約定のある建物賃貸借契約書を作成した(乙第二号証の一、二)。
4 井上企画が設立された後においても、サントリーレストランに対して本件建物の貸主たる地位を原告から井上企画へ移転する旨の手続がとられた事情は見受けられず(乙第一四、第一五号証)、本件各係争年分に係る期間中の本件建物の賃料はサントリーレストランから原告の預金口座に振込入金された(乙第九号証)。
また、本件建物が原告から井上企画へ譲渡され、原告がその対価を取得した旨の証拠はない。
なお、サントリーレストランは、昭和六一年一二月一五日、本件建物で「ブロンコ箕面店」を開店したが、平成七年一月末日をもって閉店し、原告との間の賃貸借契約を解除している(乙第一五号証)。
二 右一の2及び4記載の事実に照らせば、本件建物の所有者及びサントリーレストランに対する本件建物の賃貸人は井上企画ではなく原告であり、本件建物の賃料は原告に帰属するものであることが認められる。
たしかに、本件建物については井上企画を所有者とする表題部登記が存在し、井上企画は本件建物の固定資産税及び原告及び井上敬三の社会保険料等の支払の主体となっていることが認められるが、前記事実関係に照らして、井上企画が本件建物を原始取得したと認める余地はなく、また、井上企画が原告から本件建物を購入した旨の証拠もなく、さらに、井上企画の代表者は原告であることからすると、本件建物の表題部登記の記載から井上企画が本件建物を所有する旨の事実を認めることはできず、固定資産税が登記名義人を所有者として課されたことから井上企画が本件建物を所有する旨の事実を認めることもできず、いわんや社会保険料の負担も本件建物の所有を推認させるものではない。また、井上企画と原告との土地及び本件建物の賃貸借契約についてみても、この契約が井上企画の設立前にされたものであり、契約の内容に照らしても、営利企業としての合理性を欠き、単に、原告に帰属すべき所得を形式上、井上企画の所得とすることを企図したものであることは明らかというべきである。
三 右によれば、サントリーレストランからの本件建物の賃料は実質的にも法律的にも原告の所得に属するものというべきであり、原告が不動産所得の収入から控除されるべきであると主張する本件建物及び本件土地の固定資産税相当額が控除されていることは、被告の主張から明らかであり、これらの点を除く本件各更正処分の根拠事実については、原告において争うことを明らかにしないから、これを自白したものとみなす。
そうすると、本件各更正処分は適法であり、これを前提とする本件各賦課決定処分も適法というべきである。
四 なお、原告がサントリーレストランからの賃料収入に対応するものとして経費認定を求める原告の東京、大阪間の旅費等については、右質料収入の経費と認めるに足りる事実主張がない。また、原告が主張する原告所有地の一部が国道用地の一部となっていることによる損害及び本件土地等に対する滞納処分により生じたとする損害は、原告の主張を前提としても、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の効力を左右するものではない。
五 以上によれば、原告の本訴請求は、いずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 富越和厚 裁判官 團藤丈士 裁判官 水谷里枝子)
別表一
平成元年分 課税処分等の経緯
<省略>
別表二
平成二年分 課税処分等の経緯
<省略>
別表三
平成三年分 課税処分等の経緯
<省略>
別表四
平成四年分 課税処分等の経緯
<省略>
別表五
平成五年分 課税処分等の経緯
<省略>
(別紙)
本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の根拠について
第一 本件各更正処分の根拠について
被告が本訴において主張する本件各更正処分の金額及び納付すべき税額の計算根拠は、次のとおりである。
一 平成元年分
1 総所得金額の計算根拠
(一) 総所得金額 八六二万四〇一二円
右金額は、次の(二)及び(三)の合計額である。
(二) 不動産所得の金額 五〇四万四〇〇六円
右金額は、原告が箕面市今宮一丁目八三二番地二所在の建物、駐車場及び付帯設備(以下これらを併せて「本件建物」という。)を株式会社サントリーレストランシステム(同社は、昭和六三年九月七日付けで、株式会社新宿東京会館と合併し、株式会社ダイナックと称号変更している。以下「サントリーレストラン」という。)に貸し付けたことにより得た賃貸料収入に係る不動産所得の金額であり、その算出過程は次表のとおりである。
<省略>
右計算過程を詳述すると、次のとおりである。
(1) 総収入金額 九一五万〇〇〇〇円
右金額は、三和銀行松戸支店の原告名義の普通預金口座にサントリーレストランから振り込まれた金額のうち平成元年分の家賃に対応する金額である。
(2) 租税公課 一六八万〇五七〇円
右金額は、本件建物の固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」という。)の合計額四七万二二〇〇円及び本件建物に係る土地の固定資産税等相当額一二〇万八三七〇円の合計額である。
右本件建物に係る土地の固定資産税等相当額は、原告が箕面市に所有する土地の固定資産税等の額八〇五万五八〇〇円に本件建物に係る敷地に対応する部分の割合である一五パーセント(以下「土地の固定資産税等割合」という。)を乗じた額であり、右金額は次の算式により算定した。
(算式)
8,055,800×15パーセント=1,208,370
右土地の固定資産税等割合一五パーセントは、原告が本件調査時に提示した平成六年分の固定資産税課税標準額表を用いて、原告が箕面市に所有する土地の固定資産税課税標準額七億三六三二万七八〇六円のうち本件建物に係る土地に対応する部分の固定資産税課税標準額一億一〇一七万六六六八円が占める割合であり、次の算式により算定した。
なお、本件建物の敷地部分については、本件調査時における原告の申立てによるものである。
(算式)
<省略>
(3) 減価償却費 二四二万五四二四円
右金額は、原告がサントリーレストランに貸し付けた建物及び駐車場に対応する減価償却費であり、その算出方法は別表(一)のとおりである。
(三) 雑所得の金額 三五八万〇〇〇六円
右金額は、原告が平成元年分の確定申告書に雑所得の金額として記載した金額と同額である。
2 納付すべき税額の計算根拠
(一) 課税総所得金額に対する税額 一二二万二二〇〇円
右金額は、前記1(一)の総所得金額八六二万四〇一二円から所得税法(平成六年一〇九号改正前のもの。以下同じ。)七二条ないし八七条所定の所得控除の合計額一五五万円(平成元年分確定申告書記載額と同額)を控除した課税総所得金額七〇七万四〇〇〇円(国税通則法(以下「通則法」という。)一一八条一項によって、一〇〇〇円未満の端数を切り捨てたもの。以下同じ。)に、所得税法八九条一項の税率を乗じて算出した金額である。
(二) 源泉徴収税額 四〇万八七二七円
右金額は、平成元年分確定申告書に源泉徴収税額として記載された金額と同額である。
(三) 納付すべき税額 八一万三四〇〇円
右金額は、右(一)の金額から右(二)の金額を控除した金額(通則法一一九条一項により一〇〇円未満の端数を切り捨てたもの。以下同じ。)である。
二 平成二年分
1 総所得金額の計算根拠
(一) 総所得金額 九五一万〇五三三円
右金額は、次の(二)及び(三)の合計額である。
(二) 不動産所得の金額 五七四万四四一六円
右金額は、原告が本件建物をサントリーレストランに貸し付けた不動産所得の金額であり、その算出過程は次表のとおりである。
<省略>
右計算過程を詳述すると、次のとおりである。
(1) 総収入金額 九九〇万〇〇〇〇円
右金額は、三和銀行松戸支店の原告名義の普通預金口座にサントリーレストランから振り込まれた金額のうち平成二年分の家賃に対応する金額である。
(2) 租税公課 一七三万〇一六〇円
右金額は、本件建物の固定資産税等の額四七万二二〇〇円及び本件建物に係る土地の固定資産税等相当額一二五万七九六〇円の合計額である。
なお、本件建物に係る土地の固定資産税等相当額は、原告が箕面市に所有する土地の固定資産税等の額八三八万六四〇〇円に土地の転定資産税等割合一五パーセントを乗じて、次の算式のとおり算定した。
(算式)
8,386,400×15パーセント=1,257,960
(3) 減価償却費 二四二万五四二四円
右金額は、原告がサントリーレストランに貸し付けた建物及び駐車場に対応する減価償却費であり、その算出方法は別表(一)のとおりである。
(三) 雑所得の金額 三七六万六一一七円
右金額は、原告が平成二年分確定申告書に雑所得の金額として記載した金額と同額である。
2 納付すべき税額の計算根拠
(一) 課税総所得金額に対する税額 一四八万八〇〇〇円
右金額は、前記1(一)の総所得金額九五一万〇五三三円から所得税法七二条ないし八七条所定の所得控除の合計額一五五万円(平成二年分確定申告書記載額と同額)を控除した課税総所得金額七九六万円に、所得税法八九条一項の税率を乗じて算出した金額である。
(二) 源泉徴収税額 四三万九〇六五円
右金額は、平成二年分確定申告書に源泉徴収税額として記載された金額と同額である。
(三) 納付すべき税額 一〇四万八九〇〇円
右金額は、右(一)の金額から右(二)の金額を控除した金額である。
三 平成三年分
1 総所得金額の計算根拠
(一) 総所得金額 九一五万二五八二円
右金額は、次の(二)及び(三)の合計額である。
(二) 不動産所得の金額 五五五万九五一六円
右金額は、原告が本件建物をサントリーレストランに貸し付けた不動産所得の金額であり、その算出過程は次表のとおりである。
<省略>
右計算過程を詳述すると、次のとおりである。
(1) 総収入金額 九九〇万〇〇〇〇円
右金額は、三和銀行松戸支店の原告名義の普通預金口座にサントリーレストランから振り込まれた金額である。
(2) 租税公課 一九一万五〇六〇円
右金額は、本件建物の固定資産税等の額四六万八四〇〇円及び本件建物に係る土地の固定資産税等相当額一四四万六六六〇円の合計額である。
なお、本件建物に係る土地の固定資産税等相当額は、原告が箕面市に所有する土地の固定資産税等の額九六四万四四〇〇円に土地の固定資産税等割合一五パーセントを乗じて、次の算式のとおり算定した。。
(算式)
9,644,400×15パーセント=1,446,660
(3) 減価償却費 二四二万五四二四円
右金額は、原告がサントリーレストランに貸し付けた建物及び駐車場に対応する減価償却費であり、その算出方法は別表(一)のとおりである。
(三) 雑所得の金額 三五九万三〇六六円
右金額は、原告が平成三年分確定申告書に雑所得の金額として記載した金額と同額である。
2 分離長期譲渡所得の金額 一〇一七万一七七一円
右金額は、原告が平成三年分確定申告書に分離長期譲渡所得の金額として記載した金額と同額である。
3 納付すべき税額の計算根拠
(一) 課税総所得金額に対する税額 一六三万五六〇〇円
右金額は、前記1(一)の総所得金額九一五万二五八二円から所得税法七二条ないし八七条所定の所得控除の合計額七〇万円(所得控除の金額は、次のとおりである。)を控除した課税総所得金額八四五万二〇〇〇円に、所得税法八九条一項の税率を乗じて算出した金額である。
所得控除の金額 七〇万円
右金額は、配偶者控除三五万円(所得税法八三条)と基礎控除三五万円(所得税法八六条)の合計額である。
なお、原告は、配偶者控除四五万円としている。
(二) 課税分離長期譲渡所得金額に対する税額 二〇三万四二〇〇円
右金額は、前記2の分離長期譲渡所得金額一〇一七万一七七一円の課税分離長期譲渡所得金額一〇一七万一〇〇〇円(通則法一一八条一項によって一〇〇〇円未満の端数を切り捨てたもの。)に昭和六三年一〇九号改正による租税特別措置法三一条一項一号の税率を乗じて算出した金額である。
(三) 源泉徴収税額 二一万七〇〇四円
右金額は、平成三年分確定申告書に源泉徴収税額として記載された金額と同額である。
(四) 納付すべき税額 三四五万二七〇〇円
右金額は、右(一)の金額と右(二)の金額の合計額から右(三)の金額を控除した金額である。
四 平成四年分
1 総所得金額の計算根拠
(一) 総所得金額 九一七万七五六六円
右金額は、次の(二)及び(三)の合計額である。
(二) 不動産所得の金額 五五〇万八九〇六円
右金額は、原告が本件建物をサントリーレストランに貸し付けた不動産所得の金額であり、その算出過程は次表のとおりである。
<省略>
右計算過程を詳述すると、次のとおりである。
(1) 総収入金額 一〇〇六万五〇〇〇円
右金額は、三和銀行松戸支店の原告名義の普通預金口座にサントリーレストランから振り込まれた金額である。
(2) 租税公課 二一三万〇六七〇円
右金額は、本件建物の固定資産税等の額四六万八四〇〇円及び本件建物に係る土地の固定資産税等相当額一六六万二二七〇円の合計額である。
なお、本件建物に係る土地の固定資産税等相当額は、原告が箕面市に所有する土地の固定資産税等の額一一〇八万一八〇〇円に土地の固定資産税等割合一五パーセントを乗じて、次の算式のとおり算定した。
(算式)
11,081,800×15パーセント=1,662,270
(3) 減価償却費 二四二万五四二四円
右金額は、原告がサントリーレストランに貸し付けた建物及び駐車場に対応する減価償却費であり、その算出方法は別表(一)のとおりである。
(三) 雑所得の金額 三六六万八六六〇円
右金額は、原告が平成四年分確定申告書に雑所得の金額として記載した金額と同額である。
2 納付すべき税額の計算根拠
(一) 課税総所得金額に対する税額 一三八万八一〇〇円
右金額は、前記1(一)の総所得金額九一七万七五六六円から所得税法七二条ないし八七条所定の所得控除の合計額一五五万円(平成四年分確定申告書記載額と同額)を控除した課税総所得金額七六二万七〇〇〇円に、所得税法八九条一項の税率を乗じて算出した金額である。
(二) 源泉徴収税額 二一万七〇〇四円
右金額は、平成四年分確定申告書に源泉徴収税額として記載された金額と同額である。
(三) 納付すべき税額 一一七万一〇〇〇円
右金額は、右(一)の金額から右(二)の金額を控除した金額である。
五 平成五年分
1 総所得金額の計算根拠
(一) 総所得金額 一〇〇一万九五二五円
右金額は、次の(二)及び(三)の合計額である。
(二) 不動産所得の金額 六二九万七七七一円
右金額は、原告が本件建物をサントリーレストランに貸し付けた不動産所得の金額であり、その算出過程は次表のとおりである。
<省略>
右計算過程を詳述すると、次のとおりである
(1) 総収入金額 一〇八九万〇〇〇〇円
右金額は、三和銀行松戸支店の原告名義の普通預金口座にサントリーレストランから振り込まれた金額である。
(2) 租税公課 二一六万六八〇五円
右金額は、本件建物の固定資産税等の額四六万八四〇〇円及び本件建物に係る土地の固定資産税等相当額一六九万八四〇五円の合計額である。
なお、本件建物に係る土地の固定資産税等相当額は、原告が箕面市に所有する土地の固定資産税等の額一一三二万二七〇〇円に土地の固定資産税等割合一五パーセントを乗じて、次の算式のとおり算定した。
(算式)
11,332,700×15パーセント=1,698,405
(3) 減価償却 二四二万五四二四円
右金額は、原告がサントリーレストランに貸し付けた建物及び駐車場に対応する減価償却費であり、その算出方法は別表(一)のとおりである。
(三) 雑所得の金額 三七二万一七五四円
右金額は、原告が平成五年分確定申告書に雑所得の金額として記載した金額と同額である。
2 納付すべき税額の計算根拠
(一) 課税総所得金額に対する税額 一八九万五七〇〇円
右金額は、前記1(一)の総所得金額一〇〇一万九五二五円から所得税法七二条ないし八七条所定の所得控除の合計額七〇万円(所得控除の金額は、次のとおりである。)を控除した課税総所得金額九三一万九〇〇〇円に、所得税法八九条一項の税率を乗じて算出した金額である。
所得控除の金額 七〇万円
右金額は、配偶者控除三五万円(所得税法八三条)と基礎控除三五万円(所得税法八六条)の合計額である。
なお、原告は、他にも老年者控除五〇万円、配偶者特別控除三五万円を確定申告書に記載しているが、原告の平成五年分の総所得金額は、一〇〇一万九五二五円であり、所得税法八〇条(老年者控除)でいうところの老年者は、同法二条一項三〇号により総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額(以下「合計所得金額」という。)が一〇〇〇万円以下の者であることから老年者控除の適用はなく、また、同法八三条の二(配偶者特別控除)二項により、合計所得金額が一〇〇〇万円を超える居住者には配偶者特別控除の適用がない。
(二) 源泉徴収税額 四三万五一五二円
右金額は、平成五年分確定申告書に源泉徴収税額として記載された金額と同額である。
(三) 納付すべき税額 一四六万〇五〇〇円
右金額は、右(一)の金額から右(二)の金額を控除した金額である。
第二 本件課税処分の適法性について
一 本件各更正処分の適法性について
被告が本訴において主張する原告の本件各係争年分の納付すべき税額は、前記第一で述べたとおり、それぞれ
平成元年分 八一万三四〇〇円
平成二年分 一〇四万八九〇〇円
平成三年分 三四五万二七〇〇円
平成四年分 一一七万一〇〇〇円
平成五年分 一四六万〇五〇〇円
であるところ、本件各更正処分に係る原告の納付すべき税額は、それぞれ
平成元年分 八一万三四〇〇円
平成二年分 一〇一万四四〇〇円
平成三年分 三四五万二七〇〇円
平成四年分 一一七万一〇〇〇円
平成五年分 一四六万〇五〇〇円
であって(ただし、平成元年分、平成三年分ないし同五年分については、裁決により一部取消後の金額)、いずれの年分も被告が本訴で主張する金額の範囲内又は同額であるから、本件各更正処分は適法である。
二 本件各賦課決定処分の適法性について
原告は、本件各係争年分の所得税につき、いずれも過少に申告していたので、被告は、本件各更正処分(平成元年分、平成三年分ないし同五年分については、裁決により一部取消後の金額)において新たに納付すべきことになった税額(ただし、通則法一一八条三項により一万円未満を切り捨てた金額。以下同じ。)を基礎として、次のとおり計算した過少申告加算税をそれぞれ賦課したものであるから、本件各賦課決定処分はいずれも適法である。
1 平成元年分 一二万六五〇〇円
右金額は、右年分の本件更正処分により、原告が新たに納付すべきこととなった税額一〇一万円に、通則法六五条一項の規定に基づき一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額一〇万一〇〇〇円と、同条二項の規定に基づき、右一〇一万円のうち五〇万円を超える部分に相当する金額五一万円に一〇〇分の五の割合を乗じて算出した金額二万五五〇〇円を加算した金額である。
2 平成二年分 一五万九五〇〇円
右金額は、右年分の本件更正処分により、原告が新たに納付すべきこととなった税額一二三万円に、通則法六五条一項の規定に基づき一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額一二万三〇〇〇円と、同条二項の規定に基づき、右一二三万円のうち五〇万円を超える部分に相当する金額七三万円に一〇〇分の五の割合を乗じて算出した金額三万六五〇〇円を加算した金額である。
3 平成三年分 一三万五〇〇〇円
右金額は、右年分の本件更正処分により、原告が新たに納付すべきこととなった税額一三五万円に、通則法六五条一項の規定に基づき一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額一三万五〇〇〇円である。
4 平成四年分 一五万〇五〇〇円
右金額は、右年分の本件更正処分により、原告が新たに納付すべきこととなった税額一一七万円に、通則法六五条一項の規定に基づき一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額一一万七〇〇〇円と、同条二項の規定に基づき、右一一七万円のうち五〇万円を超える部分に相当する金額六七万円に一〇〇分の五の割合を乗じて算出した金額三万三五〇〇円を加算した金額である。
5 平成五年分 二二万五五〇〇円
右金額は、右年分の本件更正処分により、原告が新たに納付すべきこととなった税額一六七万円に、通則法六五条一項の規定に基づき一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額一六万七〇〇〇円と、同条二項の規定に基づき、右一六七万円のうち五〇万円を超える部分に相当する金額一一七万円に一〇〇分の五の割合を乗じて算出した金額五万八五〇〇円を加算した金額である。
三 本件に通則法七〇条五項を適用したことの適法性
原告は、サントリーレストランとの問の取引に井上企画という実体のない法人を介在させることにより、原告が本来申告すべき不動産所得の金額を申告せず、所得金額をことさら過少に記載した確定申告書を提出したものと認められる。
このことは、偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた場合に該当するから、通則法七〇条(国税の更正、決定等の期間制限)五項の規定により、平成元年分以後の更正処分をしたことは適法である。
別表(一)
減価償却費の額
1 減価償却資産の明細
<省略>
2 各年分の減価償却費の額
<省略>